柔らかい光を回して女性を華やかな雰囲気でインタビューする

全体的に光を回すために白壁と天井を使ってバウンスさせることにした

さて、ここからライトを使って照明をしていきます。まず前ページで気になったオフィスからの照明光ですが、レフ板を使ってその光をカットすることにしました。こういう折りたたみタイプのレフ板がひとつあるとレフとしても使えるし、光をカットすることもできて便利です。若い女性をアイドルのように見せるために光をできるだけ回したいので、ライトは白い壁と天井に当てます。1灯では足りないので、200xと60xの2灯を使いました。

背景は小型のLEDパネルを使って壁に当ててアクセントを作りました。ここまでは本人なしで作りましたが、本人が入ってからも詰めていくことはできます。バランスをみて背景と人物の明るさを変えました。またレフ板は最終的に銀レフを本人側にして光を起こしています。




スポットライトを天井と壁に向けて打つ

amaran 200xのほうはベアバルブ状態で白壁に向かって打ち、60xはトレペをかけて天井に向かって打った。白壁だからできることだ。もし白壁でなかったら他の手を使う必要があるが、コピー用紙を何十枚も貼って白壁がわりにしたこともあったそうだ。





不要な光をレフ板でカットする(兼フィルライト)

オフィス側からの不要な光はレフ板でカットした。T字型にできるスタンドでこのように設置した。折りたたみタイプのレフ板がひとつあるとなにかと便利。最終的には銀レフ板側を人物に向け、より左の頬側を明るく起こした。





ライトの角度が15度違うと世界が変わる

キーライトはバウンスさせているライトということになるのですが、このライトの角度を変えるだけで、見え方は驚くほど変わります。ライトの角度が15度違うだけで世界は変わるんです。ライトが横からになればなるほど、「真実を語る」というような雰囲気のライティングになります。   

ただ今回はアイドルのインタビューという設定なので、下の例でいえば一番左側のような正面から当たっているような雰囲気がいいでしょう。狙いに合わせたライティングができるといいですね。このイメージは最初から私の頭の中にあって、それに近づけていく作業をしました。


ライトの角度を少し変えていくだけで世界が変わる




人物と背景の照度のバランスを調整する

実際のインタビューであれば、ここからの先の作業は難しいのだが、今回はセミナーなので、さらに詰めていきたい。よくよく見るとこのライティングと背景がそぐわない気がしたので、カメラのISOを上げて全体を明るくし、ライトの光量を落とすことで、背景が落ちている感じが弱まった。

こういったことは編集でもできるかもしれないが、現場でできることは、できるだけ現場で行なったほうが自然なものになる。





背景に仕込んだライト

このシーンでは背景にミニLEDライトAL-MCを仕込んで壁に当てている。全体に明るくなってしまうのを避けるため、パネルの前にグリッド(中央のもの)をつけて方向性をつけて照射範囲を狭くて、壁にグラデーションが出るようにした。






ビジネスシーンのイメージでメガネをかけた男性にインタビューする

“片光”にして陰影をつける同じ場所に女性が座るとどうなるかも実験

次にまったく同じ場所で男性のインタビューを撮影しようと思います。前ページが女性アイドルだとしたら、そのマネージャーかプロデューサーに話を聞くというシチュエーションでしょうか。

カメラの高さは男性の口元くらいにして少しだけ見上げる角度にします。照明はバウンスではなく、スポットライトにソフトボックスをつけて斜めから照射して片光にしました。手前の白いテーブルは外しました。レフ板も黒側を人物に向けました。メガネはライトの映り込みが気になることがありますが、幸運なことに問題ありませんでした。

今回は本番ではないので、試しに同じ場所に女性に座ってもらいました。当然アングルは変える必要がありますが、そこからどう対応するかを実験していきました。




キーライトはソフトボックスをつけて斜め上から

斜め上からキーライトとしてamaran 200xにソフトボックスAputure Light Dome mini IIIをつけて。グリッドを装着して方向を限定しているがこれはあってもなくてもどちらでもよいだろう。



手前の白テーブルは外す

前ページでは手前に白いテーブルを置いて起こしていたが、それは外す。より陰影は強くなる。



不要な光をレフ板でカットする

オフィスから色温度の違う光が来ていたので、それをレフ板でカットする。ただし向きは黒側が人物に向くようにして、陰影をつけた。



男性インタビューのライティング

男性インタビューの場合のライティング。片光のライティングにして陰影をつけた。ここで最大の問題になりそうなのがメガネの反射。今回は偶然にも映り込みがなかったが、映り込む場合はライトの位置を上げるなどして調整する。絶対に映り込みNGというわけではなく、たまに映り込むくらいならOKだし、目の表情を妨げるほどの映り込みには対応するという考えで良いと思う。








同じライティングで女性を撮ったら?

男性インタビューと同じ場所に座ってもらう

ここからは実験になる。左の条件と同じ状態で、もう一度女性に座ってもらった。当然背が違うので、カメラは上からになって床が見えるようになり、床の赤が少し気になるので、本来であればカメラ位置は調整したい。

ライティングが違うとまったく別人物に見えてしまうほどに印象が変わることを、前ページの作例と比較して確認してほしい。





ライト位置が高いので下げる

さすがにキーライトの位置が高いと感じたので下げた。また、同時に女性の手前に白いテーブルを起き、そこから光を起こしている。





トレペで光を柔らかくする

どうしても「生っぽい」と感じたので、キーライトの前にトレペを掲げた。今回はロールで用意したが、トレペはぐしゃぐしゃの状態のほうが光が拡散して良い。


トレペを入れる位置は被写体に近ければ近いほど柔らかくなる(もちろん映り込まない範囲で)。







夜景を取り入れて雰囲気のある映像のインタビューに

地明かりを消して最小限の照明で作る

オフィスのほうも人がいなくなり、その場の光をすべて消すことができたので、天井のライトを全部消した上で、「この場でいい雰囲気で撮ってください」と言われたらどうするかということで、作っていきました。

やはり夜景を大きく取り入れたいと思い、構図を変更しました。ただその夜景が寂しかったので、全体に明るくしたかったのですが、これ以上ISOを上げたくはなかったので、開放F2.8のズームから50mm F1.4の単焦点レンズに替えました。夜景に合わせて照明の色温度を変え、まだ生っぽかったのでトレペを入れて光を柔らかくしています。背景は温かみのあるダウンライトがあるという想定で、パネルライトを天井と壁に向かって打ちました。ほんのわずかにアンバーさが加わっています。

「横顔度」が強すぎたので、カメラの高さと人物の向きを変更しました。インタビューといっても、これから泣き出しそうな告白的な映像の雰囲気になりました。




キーライトはソフトボックスをつけて斜め上から

amaran 200xにソフトボックスをつけて。最初は光量は1%。その後トレペを入れると光量が落ちるので、2%にした。


夜景を積極的に取り入れる

向かい側のビルの夜景がキレイだったので、カメラ位置を変更して、より夜景が大きく入ってくる角度にした。


白いテーブルを入れる

ふたたび白いテーブルを手前にもってくる。キーライトを白いテーブルで受けて少し起こす。




レンズを明るい単焦点に

夜景を利用して明るく見せるには感度が限界のISO1600だったので、ズームレンズから単焦点レンズに変更。50mm F1.4のレンズで絞りはF1.8とした。


パネルライトで天井と壁に向かって打つ

背景に温かみのある光が欲しかったので、パネルライトを利用して天井と壁に向けて打った。光量は10%程度。特に「赤」の色を強調したいわけではないので、ケルビンの違いで温かみがある光が漏れているという印象にする。





ライトの色温度を調整して温かみのある顔色にする

向こう側のビルの照明を生かして、画角を変更。夜景を大きく取り入れた。夜景側の色温度は変えられないが、バイカラーのライトの色温度は変えられるので、色温度を下げて、温かみのある色にした。色の判断はカメラモニターで見た目ですることが多い。




トレペで光を柔らかくする

まだ生っぽい感じなので、トレペを入れて光を柔らかくした。光量が落ちるので、キーライトの光量は1%から2%に上げた。インタビューというよりもポートレート、もしくは映画のワンシーンのようになった。もしこれをインタビューらしくするには、カメラの位置を少し上げて、もう少しカメラに対して正面を向いてもらう(以下の状態)。人物が横顔すぎると違う人に向かって話している印象が強くなるからだ。




カメラの高さや人物の向きを変更してインタビューとして成立するように

ライトを正面めからにした。さらに詰めていくことはできるが一応の完成としたい。右奥の白い壁や左側の机もアンバーのライトの光をわずかに受けている。右奥の白い壁の幅を狭くしてもいいかもしれないが、もしこれがないとすると、その場所が部屋である感じがなくなるので、これは残したほうがいいかもしれない。